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The Journal

JOURNAL #80

2017.12.21


「クリスマスをインストール」

はぁはぁはぁ。
マフラーの下から自分が息を吐く音が聞こえる。
時折鼻先に暖かい息がかかる。
そろそろ自転車も限界の季節かな。
そういえば街が最近賑やかに感じる。
人の声もいつもより大きく聞こえるし、
街がいつもよりキラキラして明るく見えるのはなぜか。
赤に切り替わった歩行者信号に映る紳士のシルエットをぼーっと眺める。
(ねぇねぇ今どこにいるの?)
こんな賑やかな中にいると
僕は全くその正反対の場所に行きたくなる。
そうだな、こんな寒い夜の冬の砂浜で
海の黒と空の黒の境目を見に行きたくなる。
だんだんと足からその真っ黒い海に浸かり
やがてその真っ黒は頭の先まで僕を覆った。
思考の深部へゆっくりゆっくり落ちていく。。。
騒がしい街を抜けてきたからか、
あらゆる情報が目や耳や鼻や肌に飛び込んでくる。
情報かぁ。
知るってわくわくするよな。
今は多くの人が同じ事柄に対して情報を発信できるようになったと同時に
全く同じ情報を経験できるようになった。
(仕事かぁ、気をつけて帰りなよ〜)
でも皆が同じ情報によって並列化していくと
その中に突発的に現れる変異体が出没する。
それが今活躍するアーティストであったり
活動的な人々なのだろう。
聞いた話によると、
ある著名な陶芸家はこの情報先行型社会に対して価値を見出せず
人間国宝の話を蹴ったのだと。
自分が築き上げた世界を異情報をまとった評価者との間に折り合いがつかないのだと。
なんとも贅沢な悩みである。
このように変異体は並列的な人々とは対極にある者である。
つまりギャップである。
(そういえばさ〜どうする?)
人間はギャップが大好きである。
一休さんのトンチが人々をハッとさせたのもそうだ。
橋(端)を歩いたらいけないと書かれていたら真ん中を通る。
これだけではただの上げ足取りだが、
その真ん中を悠々と歩く一休さんのイメージのギャップにハッとなったのだ。
雑誌の特集も同じ。
「今はやっぱり◯◯!!」といったと思ったら
「今だからこそ◯◯!!」と見事に裏切ってみせる。
そうして一度情報をユーザーに並列化させたと思ったら
その逆を行くテーマでギャップを生み、消費行動を促すのだ。
(この雑誌の戦略はいい加減飽きてくるけど。。。)
ギャップとは衝撃。
ギャップは心臓くる。
そして最低2つ以上の事柄で構成される複雑さだ。
ギャップとはなんと素晴らしいものか。
(何が?じゃなくて〜!)
情報が価値となって、そして情報は消耗品となった。
情報が消耗品となって、その中なから生まれた変異体たちが発する
逆説的な感性が価値を持ったわけだ。
そしてこの社会は終わることがない。
常に短命なムーブメントが起き続ける。未来永劫。大きな大変動がなければ。
それこそ火星にでも移住するくらいの大きな環境変化がなければ。
あまりにもあまりにも今、自由なのだ。
「情報」常に思案したくなるテーマだ。
この真っ暗な静けさの中で、
常に頭の中で考えていたい、
(クリスマスのこと!)
そうクリスマスのことである。
ハッ!
クリスマス!?
えっクリスマス!?
いっ、いつの間にこんな季節になっていたのだ!
どうりでこんなに寒いのに街も人も賑やかなわけだ!
女子大生が私の前で自転車にガニ股で座りながらハンドルに肘をついて
彼氏だと思われる男性と会話をしている。
どうやらクリスマス当日に家で遊ぼうという彼の提案を
猛烈に拒否しているようだ。
確かに彼氏よ、そこはどこかに連れて行ってやれよ。
なんとも落差のある信号待ちだろうか。
彼女はクリスマスという最大の幸福イベントの当日を
さらなる幸せなものへとするために先方との交渉を続け、
かたや私は「情報とギャップ」という
全くもってどうでもいい思考のドブにはまっているのである。
そうクリスマスとは、
この果てしない宇宙空間の中の
奇跡の星「地球」という天体全体を巻き込んで起こる
最大の幸せ情報共有ショーである。
クリスマスをインストールせよ。
そして幸せを共有せよ。
家族と恋人と友人と世界の人と。
孤独であれば来年のクリスマスに想いを馳せよ。
確かに私がこの信号待ちにて思案してきたギャップ。
これは皆が大好きだ。
しかしクリスマスという輝きの前では無力も同然である。
そこにギャップという作為は必要無い。
なぜならクリスマスが「幸せ」の祭典なら
そのギャップは「不幸せ」でしか演出できないからである。
よってクリスマスは、
うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
(ゆっくりしゃがんで)
(勢いよく右手を上に上げながら勢いよく立ち上がって叫ぶ)
デートしちゃえーーーーーーーーーー!
プレゼントで子供喜ばしちゃえーーーーーーーーー!
気の合う仲間と腹から笑っちゃえーーーーーーーー!
夫婦でシャンパンあけちゃえーーーーーーーーーー!
チキン焼いちゃえーーーーーーーーーーー!
枕元にとびきりデカい靴下置いちゃえーーーーーーーーーー!
イルミネーーーーーーーーーーション!
ジングルベェーーーーーーーーッル!!
なのである。
作為的なものはシンプルなものの前では無力そのものなのだ。
どうか私の前の女子大生がクリスマス当日、
電球ビッカビカのワンダーランドに連れて行ってもらえることを切に願う。
私たちWELD SUPPLY CO.のクリスマスも、
今年と来年では大きく大きく違うだろう。
そして私は青くなった信号を確認し、
紳士と共にまた前に前に進むのである。
クリスマスをインストールせよ。

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