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Journal #027

もうすぐクリスマス

先週土岐を訪れた際に立ち寄った多治見修道院です。

私が訪れた時にはちょうど信仰者や地域の方々や子供達が修道院の入り口に
大きなクリスマスリースや電飾を飾っている最中でした。

高い脚立をみんなで支えて、リースが飾られた瞬間は拍手が巻き起こりました。

お年寄りから子供達までお菓子やお茶を飲みながら、
和気あいあいと過ごす、笑顔溢れる空間はとても温かい気持ちにさせられました。

少しクリスマスの過ごし方の価値観が変わったような気がします。

最近手に取った小説の一説にクリスマスのお話があったので
編集して以下に書いてみました。

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少年はぐっすりと眠っていました。

ですから、階下の柱時計が11時を打つ音にも、
それが合図ででもあるように階段を上ってきた足音にも気づきませんでした。

少年のベットに忍び寄った、赤い服の人物は、枕元に何かをそっと置きました。

そのまま10秒くらいの間、少年の寝顔をじっと眺めていました。

そしてむふふと笑ったのです。

「……メリークリスマス」

そうつぶやくと、赤い服の人物はゆっくりとベットからはなれ、ドアを出て行きました。

その時です。

窓の外から突然、まばゆい光が流れ込んできました。
その光は子供部屋の隅々を、ぱっと明るく照らし出し、
あまりのまぶしさに少年は目を覚ましました。

いったい何事かと、少年はあわててベットに起き上がり
部屋の中を見渡しましたが、その時には光はもうすっかり消えていました。

「なんだ、いまの?」

少年は部屋のドアが少しだけ開いていることに気がつき、
そこから漏れる廊下の光のせいなのかなと思いながら、そのドアに近づきました。

そして少年は見たのです。

ドアの向こう側、真っ赤な服を着た人物が静かに階段を下りていくのを。

「あれは……」

少年の心臓はもうドキドキでした。
明日の朝いちばんで友達に、たった今自分が目撃したものについて
報告しなければならないと思いました。

寝ぼけていた頭がすっと冴えていくのと同時に
少年は思い出したかのようにベットに駆け寄りました。
するとそこにはラッピングされた箱がありました。

「これは……」

まさか。まさか。まさか。

そのまさかでした。

箱の中身は少年がずっと欲しかった24色色鉛筆、
少年はその場で小躍りしました。

「お礼だ!お礼」

そして少年はドアを出て、先ほど赤い人物が下りていった階段を、
自分も下りていったのでした。

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「大丈夫だった?」

お母さんは小声でたずねました。

「うん、気づかれなかったよ、ぜんぜん」

赤い服を着込んだお父さんは、そういって大きく伸びをしました。
そのはずみで、つくりもののヒゲが揺れました。

「さてと。次は」

お父さんは赤い上着のポケットをごそごそ探りました。

「次って?」

「いいから、いいから」

お父さんは何かを一生懸命探しています。
いえ、あれはきっともったいぶっていたのでしょう。

「お!」

予定通り、今やっと見つけたという顔をして、お父さんはプレゼントを取り出しました。

「はいこれ」

「わたしに?」

「そうきみに」

お父さんは言いました。

「そんな高いものじゃないんだ。ボーナスもあまりもらえなかったし。今年は暖房も買い替えたしね。」(あれこれあれこれ)

ぺらぺらしゃべるお父さんから、お母さんはプレゼントを受け取りました。

「ごめんね。安くて」

そうしめくくった言葉にこたえるかわりに、
お母さんはサンタさんの白いヒゲを指先で少しよけて、そこに自分の顔を近づけたのでした。

しばらくのあいだ、二人は何も言いませんでした。
柱時計の音が静かに響いていました。

それからお母さんはお父さんの白いヒゲをからかうようにしてくすぐり
二人して小さく笑い合いました。

階段の手すりから顔をのぞかせて、少年が、
そんな二人の様子をじっと観察していたことを、もちろんどちらも知りません。

二人の会話が聞き取れなかったものですから、少年は、
それは興奮した顔をして、こんなことをつぶやいたのでした。

「これをお父さんが見たら、面白いことになるぞ。」

XXX

鈴の音を響かせてサンタさんの一行は、
あっちの屋根、こっちの庭、アパートのベランダへと大忙しです。
その時、サンタさん一行に付きそっていた金色の天使が言いました。

「ねえねえサンタさん、いつもサンタさんが配っているその箱なんですけど、
中身はただ変な光が出るだけですよね。
いったいサンタさんは世界中のみんなに何を配っているんですか?」

金色の天使の質問にサンタさんは大笑いしました。

「おいおいおい、お前は今まで、自分が何のためにこんなことをしているか知らなかったのかね。

トナカイや、天使に教えてやってくれ。私が毎年何のためにこんなことをしているのかを。」

トナカイは自分が知っていることに得意気な顔をして答えたのです。

「私達が配っているのは、オモチャでもお菓子でも、お金でもありません。
そんなものは人間にとって必要ない、全く必要ないものなのです。

人間にとって本当に必要なものは、本当に大切なものは、いつまでも飽きることのない何か。
そして、自分がこの世に一人ぼっちではないということを信じさせてくれる何かなのです。

だから私達はみんなにプレゼントを配るのです。
私達が配っているこのプレゼントには、ちゃんとした名前がありません。

名前なんて必要ないからです。

人々はこれを、幸せとか、愛とか、驚きとか、喜びとか、思い出と呼んでいます」

「さあさあ、あらためて、メリークリスマス!」
サンタさんは言いました。

「メリークリスマス!」

今夜は世界中に、歌がひびきます。

「メリークリスマス」

( I saw Mommy kissing Santa Claus ー 夕べ僕は、ママがサンタにキスをするのを見たんだ ー)

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あと数日でクリスマスです。今年のクリスマスは平日です。
仕事帰りにはそれぞれのクリスマスをすり抜けながら帰ることになるでしょう。

帰りの電車でクリスマスケーキの箱を持っているサラリーマンの表情が
なんとも恥ずかしそうにしていてクスッとしてしまいます。

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